どうして名前ってあるの?

あらすじ

クラス替えのあったゆっぴー(中学生)、新しいクラスには同性同名の子が3人もいることに。自分と他の人をわけるのに名前があるわけなんだけれど…それがまったく一緒だったら大変だねって母親と話します。母親から名前って不思議ね、もし名前がなかったらどうなるのかしら?と問われると…
  • 動画を見てもらいましたね。どんな意見が出ていた?
  • その意見の中で自分の意見に近いものはある?
  • もし名前がなくなったらどうなっちゃうかな?
  • 番号で呼ばれるのと名前で呼ばれるのは同じ?違う?
  • どうして名前が必要なんだろう?
  • 名前には意味があるから大切なのかな? ニックネームはどう?
  • 秋田犬やプードルは名前?それとも? 
  • 名前がなくなったらどう相手と話をする?
今回のテーマは「もし名前がなくなったら?」です。大人でもなかなか考えたことのないだろう仮定の世界について、子どもたちと話し合ってみました。名前がなくなった世界を考えると、人は人を番号で呼ぶようになる、区別ができなくなる、具体的にはテストや忘れ物が本人に届かなくなる、なんて意見が出てきました。番号で呼ばれることには、面白いもので多くの子どもたちが抵抗感を感じるようです。
その上でさらに問いかけを進めます。人の名前以外にも名称があり、秋田犬やプードルのような種類を分ける言葉や、手やひじなど身体の名称なども名前なのかどうか。それらも名前だとなっていくと、私たちの試みでたどりついたのは、言葉を発することができなくなる、ということでした。「お母さん、目の前のコップをとってくれる?」を仮に名前(名称)を使わずに表現したとすると…と実験してみましたが、どうにも言葉がでません。透明のとろとろしたものをいれるかちかちの…とでもなるのでしょうか?
私たちは無意識的に、さまざまなもの・人・事柄を区別し、分類して名称をつけ読んでいます。その分類こそ、言葉の言葉たる由縁であって、それらが無くなると意思や考えを伝えることすら困難である、ということに行きつきました。
哲学対話は言葉によって考えや意見を現しあうことですが、言葉のもつ本質的な意味を、子どもたちと一緒に考える結果となりました。

F=ファシリテーター(指導者)
C=子どもたち それぞれの発言を指します。

F:もし名前がなかったらどうなっちゃう?名前がなかったら困ることってあるかな?
C:名前がなかったら、人は番号で呼ばれるようになっちゃうんじゃない?
C:困る!!

F:どんなことで困るかな?
C:呼ばれ方に困る。
C:いやな呼ばれ方をしそう。

F:呼ぶときはどうする?
C:みんなーっていう。
C:「みんな」も名前じゃないの?
C:名前がなかったら、「みんな」とかじゃなくて「あなた」とか「きみ」っていうかな。

F:「きみ」とか「あなた」っていうのは名前かな?
C:名前っぽく感じない。
C:「きみ」はあだ名っぽい感じ。
C:「あなた」も名前じゃないから違う。

F:「男の子のみなさん!」っていうのは?
C:それだと誰のことかわからない。
C:ほかのクラスの子も来ちゃうかも。

F:1年1組17番は?
C:出席番号は名前できまってるから、名前がなくなったら、出席番号もなくなる。
C:背が高い順で出席番号を決めたらいいじゃん。
C:番号で呼ばれるのはなんか嫌だな。
C:でも、その日その日で番号が変わって呼ばれるのは楽しそう。
C:日によってあだ名が変わるのはいいけど、番号が変わるのは嫌だな。
C:名前がなかったら苗字もないってこと?

F:あだ名や苗字は名前?
C:苗字は名前じゃないと思う。
C:先生からはだいたい苗字でよばれるけど、友だちから名前で呼ばれる。
C:クラスに同じ苗字の人がたくさんいることもある。
C:苗字が一緒でも番号が違うから、番号おぼえれば大丈夫。1番のAさん、2番のAさんとか

F:苗字じゃなくて名前が一緒のときはどうする?
C:お母さんにいって名前を変えてもらう。
C:変えたい!
C:市役所に届けを出しちゃったら変えられないんじゃない?
C:大人になったら名前変えられるよ。お母さんは違う国から来て、結婚したから、日本の名前に変えたよ。
C:へー。でも自分勝手には変えたくないな。自分で、こっちがいい、あっちがいいっていうのは嫌だな。

F:自分の名前を自分で変えたい?
C:変えるのはちょっと嫌だ。
C:自分の名前は気に入ってるし。
C:自分の名前の全部が気に入ってるよ。

F:親から自分の名前の意味を聞いたことがある?
C:ある。家族全員同じ漢字が入っている名前だから、家族の仲間入りでうれしい!
C:自分の名前は、有名人にも多い名前だから好き。
C:名前気に入ってるから、変えろって言われても変えたくない。
C:三文字の名前がよかったなー。
C:同じ名前のままでいいから、呼び方の発音を変えたいな。

F:名前がないと何に困る??
C:落とし物をしたら出てこない!
C:テストが配れないし、誰が100点分からない。
C:でも、それだけだったら、番号があれば大丈夫じゃない?

F:番号は名前なの?
C:名前がないなら、番号しかないよ。
C:でも全部番号になったらさ、日本っていっぱい人がいるから大変じゃない?
C:1億19999999番ってなる?
C;世界中の人をいれたらもっとたくさんで70億人!?
C:国によってAとかBってわけて、その国で生まれた順に番号にすればいい。
C:同じ時間に生まれたら?
C:同じ時間に生まれたら、くじ引きにする。
C:人が死んだらどうするの? 3番の人が死んだら?
C:4番の人が3番になる。ひとつずつズレていく。
C:すごい数になっちゃうけど、番号は変えないでつけていけばいいんじゃいかな。数字はたくさんあるから

F:名前がなくても人が分類できればいい??
C:分類できても呼び名がなくて長い数字だと、名前呼ぶのが大変。休み時間が終わっちゃう。
C:全員同じ呼び名は?全員タナカさんとか。
C:全員タナカなら、発音を全部かえる。
C:発音もそんなにないから、全員あだ名をかえる。

F:あだ名は名前??
C:名前!
C:あだ名も名前なら、今のあだ名も名前になっちゃうじゃん。
C:あだ名がない人はどうするの??

F:あだ名ってなんであるの?だれが決めてる?
C:呼びやすいから。
C:友だちがきめてる。
C:名前で呼ばれているからあだ名ないけど…。
C:あだ名は10個くらいある。
C:生まれる前のお母さんのお腹にいるときは、おチビちゃんとか呼ばれていた。だからニックネームが名前になってもいいじゃないかな。

F:ニックネームはなんであるの?
C:ニックネームがあると親友とか絆が深まった感じがする。
C:でも、自分の名前に関係ないニックネームだったら嫌だからそんなふうに思えない。
C:嫌なあだ名もあったな…。省略されて、はじめの一文字だけで呼ばれたり。

F:名前がなくなっていいことってある?
C:ない。
C:名前がなかったら、言葉がないと思う。言葉がわかんないと名前がつけられない。

F:じゃあ、スマホは名前??
C:物の名前。
C:物にも名前をつけることもある。

F:犬は名前??
C:犬は種類の名前。区別の名前。
C:犬は苗字。…やっぱり犬は種類かな。トイプードルとかあるし。
C:犬は種類を区別する名前で、犬の中にもチワワとか名前がある。

F:世界から名前がなくなったら、自分が飼ってる秋田犬の名前はなくなるけど、秋田犬は残る? 秋田犬も含まれる? 犬が含まれる哺乳類は?
C:それもなくなると思う。
C:種類は名前じゃないから残る。

F:じゃあ、日本人は?ヒトは?
C:それは種類だから…
C:え、言葉って全部名前なの?
C:手も名前。
C:うれしいとか、かなしいとか。
C:そっか、感情にも名前をつけてるんだ。
C:モヤモヤしてる気持ち。これもモヤモヤって言葉がなかったら言えないってことだよね。
C:全部、絵で描く。いつも紙もってないと!
C:ジェスチャーを使う。
C:自分が表現していることが、相手に伝わるまでは、言葉で表せないね。
C:絵が下手な人は、思ってることを手で表す。
C:それだと、自分の中では思ってることを表現する言葉がすでにあることになっている。言葉がなければ表現もできないんじゃないかな。
C:名前がなければ何も表せなくなっちゃう。いろんなものを指して物に「あ」とか書いてあったり、全部の絵が描いてある紙があれば伝えられる。

F:手話は?
C:手話も「手話」って名前がついちゃってる。
C:耳が聞こえない人は、音の言葉はきいたことないんじゃない?
C:でも、本は読めるよ。
C:じゃあ、やっぱり、名前がなくなったら字がなくなって、全部絵の世界になっちゃう。

F:絵は名前じゃない?
C:絵は名前でない。
C:昔の人は絵で表していたし、絵でいいんじゃない。

F:名前がなくなって、言葉もなくなっても困らない?
C:困らない。
C:困るときもある。絵で伝わる人と伝わらない人がいる。
C:教え合って、生活すればいいじゃない?
C:え、じゃあ、教えるときはどうするの?
C:絵を書いて、それを見て分かった人が表現して…。
C:でも相手の考えていること、正しくわかるかわかんないよ。

F:名前から言葉の話になったね
C:だって、言葉は全部名前でできてるから。
C:「あなた」も「うれしい」もうれいしって名前がついちゃってる。
C:そうなると、数字も名前だね。

F:数字が名前なら、数字で呼ばれてもいいことになるよね?
C:うーん。じゃあ、数字もなしだ!
C:やっぱり絵で!

F:数字とみんなの名前はどこか違いがあるのかね?
C:1番だと文字数が少なすぎて、「しちばん」と間違えちゃうかもしれない。
C:365番は大丈夫。あ、それも名前になっちゃうから数字もなしじゃない。
C:番号も、クラスの中だけで順番についてるのか、学校中全部でつながってる番号なのか分からない。

F:番号が自分だけのものかどうかわかならいってこと?
C:番号の名前になって、死んだ人の番号がついてたら、大人になって嫌な人もいる。
C:自分が嫌いな人のおじいちゃんの番号が自分についてたら嫌だ。
C:1番の人が何人も死んじゃってたら、どの1番さんかわからないかもよ。
C:数字は読み方が少なすぎる。言葉は読み方がたくさんあるから表現できそう。
C:市役所の人が間違えて、1番さん2人につけちゃって、呼び出すときに間違いがおきそう。

F:間違わないために名前があったほうがいいってこと?
C:うーん。同じ名前の人もいる。
C:事件のときに、1番さんが死んじゃって、逃げた1番さんがいて、となると大変。
C:写真があればわかる。ニュースででる。
C:でも、ニュースもなくなっちゃう。だって、ニュースは言葉でしゃべるから。
C:名前がなくていいことは、悪いことしてもばれないことだ!
C:写真でばれるよ。
C:あ、でも「写真」も名前だからなくなる。え!「地球」って言葉もなくなるの?
C:言葉がなかったら、絵でも表現できないよ。

F:じゃあ、言葉がないアリはどうしてる?
C:触角ではなしてる。
C:蜂は飛びかたで。だから、人間も動きで表せばいい。
C:人間は、大きい声がでるけど、虫たちはちっちゃい声だから人間には聞こえない
C:地獄耳の人は聞こえるかも。
C:猫とか犬はしゃべってるというより、甘えた声を出したり、すりすりしてくる。しゃべってるわけでじゃない。

F:目もみえない、耳も聞こえない人は?
C:粘土で作って、形でおぼえる。
C:目もみえない、耳も聞こえない、手も使えない人はどうしたらいいのかな。どうやって表すのかな…

F:はい、ありがとうございました。時間がきたので今日の話し合いはおわりです。


※これは小学1年生~6年生までの子どもたち10名が、1つの輪になって話し合った記録です。