年上の言うことに従わなきゃならない?

あらすじ

ある会社で働く二人の会社員。1日の仕事が終わったあと、急に上司に呼び止められて仕事で残るように頼まれる。約束もあったのにそんなの困りますと、上司に抵抗するけれど給料さげると言われてしまう…         
  • 3人の働いている大人がでてくる動画をみてもらいました。どんなお話だったかな?
  • 動画を見てわからなかったところはある?
  • 年上の人から、命令されたことはある? それはどんなことだった?
  • もし自分がアキナ(上司)の立場だったらどうする? 命令をした? それとも…?
  • もし自分がしょうこ(部下)の立場だったらどうする? デートを優先した? それとも仕事を優先した?
  • 年上からの命令と、自分のやりたいことや約束、どちらを優先すべきだろう?
  • 年上のいうことはいつでも正しいっていえるかな? 正しいときと正しくないときに違いはある?
  • どんな人のいうことだったら聞こうって思う? 言うことを聞く相手と聞かない相手にどんな違いがある?
この動画は、実際に働いている大人たちが直面する問題を題材に製作しています。約束や予定があったけれど、仕事をしてほしいと命令されたときに、何を優先すべきか、を問いにし、それぞれの優先度の違いを、理由とともに対話するための動画となっています。

私たちの実践では、おもしろいことに、親と自分との約束が急な仕事で反故にされたとしても我慢し、親には仕事を優先してほしいと子どもたちは考えているようです。しかし、自分が部下の立場だったら、仕事とデートだと当然デートを優先する、という子どもたちからの率直な意見が返ってきました。

問いのテーマは年上かどうかが相手の話を聞くか否かの判断基準となっていますが、それを超えて、どんな相手の意見だったら耳を傾けるのか、その人が言っていることを正しいと思うのか、が後半の話し合いのやりとりから聞くことができました。

そうしたやりとりの中で、「自分の気持ちや状況を考えて、自分の話も聞きながら、適切な言葉を伝えてくれる人の話は聞こうと思う」というのが私たちの実践の中で子どもたちから出された到達点だったように思います。

子どもたちが親や先生、その他の年上との人間関係の中で、どのような態度で自分たちに接してほしいと思っているのか、その一部を垣間見れるのではないでしょうか?

F=ファシリテーター(指導者)
C=子どもたち それぞれの発言を指します。

F:動画をみて、どんなことがわかった?
C:二人のふつう?の会社で働いている人がいて、急に上司から仕事のために残ってほしいって。
C:上司は子どもがいて残って仕事ができないから、二人に仕事をしてほしいって命令した。
C:命令された二人のうち一人はデートの予定。彼氏ともうお店の予約がしてあった。
残って仕事はできないって言ってた。
C:その人は上司に代わってほしいって言ったけど、子どものお迎えで無理って。で、ケンカしてた。
C:結局、一番年下のカワカミさんが仕事をやることになった。

F:うん、なるほど。そうですね。みんなは年上からこれやれあれやれって言われたことってある?
C:1年のころ、年上の人から、この遊びをしようって言われて、やりたくなかったけれど、それで遊んだ。
F:うん、なるほど。今回だと、「仕事をしないと給料をさげるぞ」って言われたわけですね。理不尽な状況。そのとき遊びに混ざらなかったら、仲間はずれにするぞって言われたりとかはなかった?
C:うーん、別に。
C:お給料をさげるぞって言った上司に、そんなこと言われたらどんな気持ちになるか質問すればよかったのでは?

F:他に今回の動画をみて思うところはあった?
C:自分の約束したことがあったのに、急に上司から仕事だって言われたらどうすればよいかわかんなくなっちゃう。どっちを大事にしてよいのかわかんない。
彼氏との約束か、お仕事か。どっちを選べばわかんない。
C:約束あったのに、急に言われたら困っちゃう。
C:その会社の社長は誰なの?
F:社長さんはでてきてないね。でも仕事ってチームでやるから、サッカーみたいに。
そのチームで一番えらいのが上司かな。上司は仕事を命令したり、チームが仕事をしやすいようにいろいろ決める立場。
C:どんなに偉くても、上司の言ってることに従う必要はないんじゃない?
C:質問で、立場ってなに?
F:立場っていうのは、例えば先生と生徒だったら先生は勉強を教えることが役割。逆にみんなが先生に勉強を教えることってあんまりないでしょ? そういう風に、その人がする役割、みたいなものかな。リーダー。
C:でも、リーダーなのに、この上司は人の気持ちがわかってないよね。
C:あー。
F:なるほどね。逆になんでリーダーはあんな風に仕事をいきなり命令したのかな?
C:自分は子育てをしているから、保育園に迎えにいかなきゃならない。
C:自分の勝手? 
C:でもさ、上司の人は相手の社長?に対して、まずは部下の二人の予定を確認して、別の日を提案すればよかったのに。
C:というか、社長との会議をさっさと終わらせれば、保育園の迎えも彼氏とのデートもOKなんじゃない?

F:なるほどね。そういう配慮が上司のアキナには必要だったかもしれないね。
ちょっと質問を変えてみます。みんながアキナ、つまり上司・リーダーの立場だったらどうする? 例えば、学校の先生から、掃除をするので同じ班の人たちを5人連れてきてください。って言われたら?
C:先生に言って別の予定にしてもらう。
F:班の人に提案したら、塾とか買い物とか、約束があって行けませんって言われちゃった。
C:別の人をつれてくる。だって用事があるんだから仕方ないじゃん。
C:先生に、他の人は帰っちゃったって伝える。
C:買い物の人は別の日にしてもらって、塾の人は塾にいってもらう。
F:となると、塾の人はOKで、買い物だったら来てもらうってこと?
C:そう。変えられそうな用事だったら変えてもらう。
C:習い事とかあったら仕方ないじゃんか。
F:年上の人、たとえば親とか先生とか、から、あれやれこれやれって言われることはない?
C:テレビ我慢して、宿題した。
F:それは誰にどんなふうにいわれたの?
C:おかあさんに、火曜日までに宿題終わらさないと塾やめさせるって言われた。
F:それは今回の動画の上司や部下の命令と似ているかもしれないね。
他に同じような経験をしたって人はいる?
C:さっきもいったけど、年上の友達からゲームして遊ぼうって言われて、嫌だったけどなんとなく従った。おにいちゃんとかだとすぐぶたれたりするし。
C:思ったんだけど、年上の友達のさらに年上の人にいって、いうこと聞いてもらうとかってできるんじゃない? 上司がひどかったら社長に言うとか。
F:そうなると、なんとなくみんな、年上の言ってることはだいたい正しいくて従ったほうがよいってことになる?
年上の言ってることってほんとうに正しいの? 正しいと思う人は?
〈ほとんど手があがらない〉
F:じゃあ、親や先生が言ってることはどう? 正しい?
〈1割くらいの子どもたちが手をあげる〉
C:先生だって、間違いたりするもん。間違ってるのにテストに丸かいちゃったり。
C:黒板に間違った字を書いたり、文字を抜かしちゃったりする。
C:金曜日に体育をやるはずだったのに、予定がかわって無くなったりする。それがメッチャある!
F:そういうときってみんなからなんか言ったりするの?
C:言う。すぐ言う。
F:そうすると? 
C:先生から謝られる。ごめんって。
F:それはそんなに困らないんだ?
C:別に。体育の時間を別の日でやってくれるし。

F:じゃあ、ちょっと別の話をしてみようか。上司であるアキナは子どものために仕事をせずにかえったわけですが、そのアキナの子どもの立場にたってみよう。
たとえば遊園地に行くって約束していて、仕事でいけなくなっちゃったってなったら、みんなが子どもだったらどうする?
C:別の人といく!
F:え?お父さんやお母さんと約束していたのに、別の人でいいの?
C:仕事で仕方ないから、別の日で約束する。
F:となると、お父さんやお母さんが、自分との約束と仕事だったら仕事のほうをとってもいいの? 許せる?許せない?
〈9割の子どもが許せるに手をあげる〉
C:仕事だったら仕方ないもん。
C:お給料さがっても困るし。
F:許せないって人の意見は?
C:だって約束してたんだもん。自分を優先してほしい。
C:許せないって思うけれど…文句は言わない。
C:自分たちが着ている服とかご飯とか親が仕事をしてるからあるわけだし。お金なくなったら、遊園地にもそもそも行けなくなるから。
F:じゃあ、逆の立場にたってみようか。みんなが親で子どもがいます。子どもとの約束があるけれど、仕事しろって命令されました。どうする?
C:子どもとの約束をとる。
F:給料さがっても?
C:はい。いいです。
C:速攻で仕事を片付けて、終わらせて、約束も守れるようにする。
C:約束をやぶったお詫びをする。なんか買ってあげるとか。
C:その日は仕事をして、別の日に埋め合わせをする。
F:となると、やっぱりみんな仕事をしちゃう?
C:うーーん。まぁそうです。
F:その子どもから「おかあさん、おとうさんひどい!」って言われたら?
C:仕事だから仕方ない。がんばってお給料もらうから我慢してっていう。
C:もしも仕事にいかないと一文無しになっちゃうからって。

F:じゃあ、しょうこさんの立場にたってみよう。好きな人と会うデートと、お仕事だったら?
<デートを優先する、に9割がたの子どもたちが手をあげる>
C:やっぱデートでしょ。私、好きな人いるよ。
C:私は仕事にいく。だってお金なくなったらデートだってできないし。仕事がおわったあとに電話して、仕事だから仕方なかったって。また別の日に会おうって。
F:私と仕事、どっちをとるのよ?って絶対言われるよ!
C:だってしょうがないじゃん。

F:となると、みんなの意見をまとめると…、自分が子どもの立場だったら、親が仕事にいかなきゃならなくなっても、嫌だけれど我慢する、という意見が多かったね。
で、みんなが親の立場だったら仕事にやっぱり行く。
でも、デートの約束だったら、多くの人が仕事よりデートをとる、とこういうことになりますね。
逆に何歳以上年上だったら、いうこときこうかなって思うの?
C:10歳以上年上。1歳年上とかじゃだめ。
C:20歳以上だったらいいかなぁ。
F:それがまったく会ったこともない人でも?
C:それは違う。聞かない。
C:信頼してる…から?
C:でもおかあさんたちでも間違えるわけだから。年齢だけじゃわかんない。

F:前半の話までさかのぼると、先生とか親とか、上司とか、日頃助けてもらったり、信頼してたりするから、間違ってしまうこともあるけれど、なんとなく言うことを聞くってそんな感じかな。
そうなると、年上でもいうことをきく人ときかない人があるってことかな?
C:そう。ただしいときとただしくないときがある。
C:相手の気持ちを考えて、意見を言ってるかどうかかな。自分のことも考えて言ってくれているときの意見だったら聞く。
F:じゃあ自分の気持ちをわかってくれていたらOK? 「宿題大変ですものね、あなたがそんなに大変だったらやらなくていいんじゃないですか?」とか言われたら?
C:それはなんか違う。
C:よく考えて、正解している人。人の気持ちを考えて、やりたくないってこともわかっているけれど、宿題はやるべきだから、宿題やろうねって優しく聞きながら話してくれる人。
そんな人の意見はやっぱり聞くかな。
F:はい。時間がきたので、今日の話し合いを終わりにします。

※これは、小学1年生〜小学5年生まで11名の子どもたちと、1つの輪になって哲学対話をした記録です。