命より大切なものってある?

あらすじ

ある日のつーぼー(小学5年生)。学校の授業で「命より大切なものはないのよ」って習ったけれど、「本当かなぁ?」。ふっと浮かんだ疑問を、大人たちに投げかけます。すると5つのまったく異なる答えが。。。
  • 動画を見てもらいましたね。大人たちからはどんな考えや意見がありましたか?
  • 出てきた意見の中で自分の考えに近いものはありますか? 手をあげましょう。
  • そう思った理由はなんですか?
  • これ以外に、命より大切だって思うものはある?
  • 大切だと思うものに順番はつけられますか? つけられるとしたらどんな順番になる?
  • 自分の命と同じくらい大切な人・ものってどんなものがありますか?
  • もし、自分の命を投げ出したら、多くの人や大切な人が助かるとして、それはできる?
  • 命が一番大事だという意見の人に聞きます。その命とは誰/何の命のこと?
  • 人の命と、人以外の動物や植物の命ってくらべられますか? それはどちらが大事?
  • 人や動物、植物以外にも命があるものってある?
  • 自分が育てている犬や猫と、自然に生きている犬や猫に違いがありますか?
  • もし違いがあるならそれはどうしてですか?
この動画は、製作者が命より大事そうだと考えた4つのもの、①お金=自身の命を支えるために必要なもの、②夢=将来への希望や生きがい、③美しさ=容貌や高価な宝石、④愛=自分以上に大切な誰かの命、そして⑤命そのもの、の5つを対比的に描いたものです。

私たちの実践では、自分・大切な人の命>お金>夢・美という優先順位を子どもたちはつけました。その理由は命がないとお金も稼げないし、夢や美しさを追うこともできない、というものでしたが、何を優先にするかはそれぞれ異なるものとなるでしょう。なぜその順番にしたのか、理由を聞いてみるのもいいですね。

私たちの試みの中では命の前にその条件である地球が大事だという意見もありましたが、9割以上が自分ないし誰かの命が大事という意見に偏りました。
1つの考えに子どもたちの意見が偏ってしまうような場合に対話を深める方法は、意図的にその1つの考えを細かく分けて提示することが必要です。

今回のテーマで具体的にいえば、その「大切な命」とはいったい誰/何の命をさすのか、つまり「自分が大切に思える命の範囲は何か」、自分・親・子ども・祖父母・親戚・友だち・見ず知らずの人・同じ国の人・外国の人・ペット・動物・植物…のように、多少いじわるな質問になっても明らかにしていきます。

そうすると、再び子どもたちの間で意見が割れ、それぞれの違いを明らかにすることができると思います。
大人でも答えを出すのが難しい「問い」、一緒になって頭を抱えて悩みながら対話することを楽しめると思います。
F=ファシリテーター(指導者) 
C=子どもたち のそれぞれの発言を指します。

F:動画をみんなで見てみましたね。つーぼーは、学校の先生から「命より大切なものはないよ」って教わります。でも本当にそうかなってふっと疑問に思って、大人たちにたずねてまわりました。それぞれどんな意見があった?

C:お金。生きていくにはお金がかかるから。
C:夢をもつこと。ただ生きていてもしょうがない。
C:美、美しさ。
C:命より大切なものはない。命が一番大事。
C:愛。自分の命より大切だと思う人がいる

F:まずこの5つの中で自分の意見に一番近かったのはどれですか?
〈それぞれ挙手、命が一番大事に偏る〉

C:うーん、全部大事な気もする。
C:でも命がないと仕事できないし、お金も稼げないじゃん。
F:となると、大切なものには順番がある??
C:夢を叶えるとか美しくなるには、お金がないとできないと思うから、夢や美しさよりお金が大事。
C:お金がなくても生きていけると思う。ぶつぶつ交換とか。でも命がないと、お金もなにも稼げないから、命のほうが大事。
F:となると、命の次にお金が大事で、お金のつぎに夢や美しさがくる?
C:うーん、やっぱり順番はつけられないと思う。
C:やっぱり命だと思う。もし自分が死んじゃったら、お父さんとお母さんとかいろんな人が悲しんじゃうと思う。だから、私はしっかり生きなきゃいけない。
C:でも、もし自分だけ生き残ったとしても、周りの人がみんな死んじゃったら、それって意味があると思えない。私は周りの人を助けたいって思うかな。
C:あー、私もそう思うかもしれない。
F:その周りの人って誰のこと?
C:みんな。他人。
F:会ったことのない人でも?
C:うん、そう。私たちはまだ、子どもだから、まだわからないことがあってもいいと思う。
F:私たちも一応、大人らしいけれど、これについては答えがでません笑

F:この5つ以外に意見があるって人はいる?
C:私はまだ子どもだけれど、自分の子ども。
C:家族。
C:地球。
F:新しい意見が出たね。その意見も含めて、もう1回手を挙げてみようか。
〈地球、家族に手をあげる人数が増えてくる〉

F:なぜ地球だと思った?
C:さっき命がないとお金も美しさも夢もないって話だったけれど。そもそも地球がないと、空気も食べ物もないし、命がなくなっちゃうから。生きていけないもの。
C:地球を守るためにできることはやると思う。

F:むかし、ある映画で隕石が地球にやってくるという映画がありました。その隕石を壊すために、何人かの人が地球からロケットに乗って隕石を壊しました。が、その人たちは宇宙船が爆発してみんな死んでしまいました。そんなことになったらみんなはロケットに乗る?
C:乗らない。だれか大人がやってくれるのを待つ。でもどうしてもいなかったら自分が頑張る。
C:私は地球を救うために旅立つ。だって、誰かがいかなかったらたーくさんの人が死んじゃうから。わたしは旅立って地球を守る。

F:もう少し近い例にしてみようか。今ここで火事が起きて、20人くらいいるけれど、誰かが火の中に飛び込んで消火器で火を消さなければならない。そうなったら? 
C:命を落とすのはやだけれど、だれかがいかなきゃならないなら、私は行く。
C:もしかしたら火を消しにいっても、助かるかもしれないし。だから行く。
C:消火器なんか使わなくても、みんなが持っている水筒の水をかけて消せばいいじゃん。
C:私は行かない。火が出る原因を作った人が責任をとって消しにいくべきだと思う。
C:電話を持ってる人が消防士を呼ぶ。
C:そしたら消防士の人が死んじゃうかもしれないし、来る前にみんな焼けちゃうかもしれないじゃん。
C:消防士さんは仕事として訓練をしているし、そういう装備もあるから、消防士にお願いする。
C:自分の命は1つしかないから、助けがくるまで待つ。

F:じゃあ、自分の命と同じくらい大切にしたい人やものってあるの?
C:私は地球と、その中のもの全部。もし命がけでもできることがあるならやる。

F:それ具体的にはどんなもの・人なの? お父さん・お母さんと自分の命だったら?
C:両方大事。
F:おじいちゃんとおばあちゃんだったら?
C:自分。
F:自分と自分の子どもだったら?
C:自分の子ども。
F:相手によって意見が違うみたいだけれど、それはなぜ?
C:おばあちゃんもおじいちゃんも、おとうさんもおかあさんも、長生きしているでしょ。もし自分に子どもがいたら、その子は一番生きている時間が短いから。
C:年下の命が一番大事ってこと?
C:そういうこと。
C:自分より年上の人は自分の力で逃げたり、解決できたりできるけれど、自分より年下の人は、それができないから。誰かが守らなきゃならない。
F︰となると、人の命にもそれぞれ大切にしたい順番があることになるのかな。じゃあ人以外の生き物の命と、人の命だったら? どちらが大事だと思う?
C:動物も植物の命だって、1つの命で大事だから、両方大事。
C︰一緒に住んでいる犬や猫がいて、両方大事だもの。

F:となると、みなさんはお野菜やお肉を食べていますね? 人の命と、野菜や動物の命はどちらが大事ってことになるの?
C:たとえば牛がいますよね。牛だって、がんばって私たちに命をくれているわけで。それで私たちは子どもが生まれたり、子孫を繁栄させていきていけるわけで。
F:そうなると、自分で育てた牛がいて、それを食べないと自分は生きていけないってときはどうするの?
C:食べずに牛乳をしぼって飲む
F:なるほど。でもその牛がオスだったら???
C:食べない。スーパーで売っているものを買って食べる。どうしてもってときは、そのスーパーに牛を売って、さばいてもらう。
F︰となると、同じ牛でも自分で育てた牛とそうじゃない牛は違うってことになるね。育てた牛は食べられないけれど、スーパーで売っている牛は食べられる。どうしてだろう? 
とこんなところで時間が来てしまったので今日の対話を終了します。
ありがとうございました。

※この対話には、小学1年〜5年生までの子どもたちが15名が参加し、1つの輪になって哲学対話を行った記録です。